子育て改革のための共同親権プロジェクトは、2023年11月7日付けで、法制審議会家族法制部会長宛に、「親子の愛着形成ができる真の共同親権制度を求める意見書 〜 裁判所都合の“見せかけ共同親権”が家族を破壊し尽くす 〜」を発出致しました。

意見書本文

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本プロジェクトは、2021年までに共同親権に法制度の転換をすることを求める提言を行った、主に別居親の当事者の団体です。

ご存知のとおり、現在、別居・離婚に伴う子の連れ去りが重大な問題となっています。10月18日付け毎日新聞の1面には「『子、連れ去り勝ち』の絶望」の記事が掲載され、10月21日にはテレビ朝日系列の「池上彰のニュースそうだったのか!!2時間SP」という、地上波の20時台のTV番組で、日本が子の連れ去り勝ちであることや、日本が諸外国から拉致国家と呼ばれていることが放送されるなど、メディアの関心が大変高まっています。

現代の日本社会において、そもそも子どもはどのように産まれ、どのようにしたら育つのでしょうか。まず、子どもは男女の親密な関係によって産まれますが、その時に必ずしも法的な婚姻状態にあるとは限りません。そして、子どもが幸せに育つためには、両実親や兄弟だけでなく、親戚・地域の方々など、身近な人々の愛情が欠かせないことを否定できる人はいないでしょう。

しかし、そのような当たり前と思われることが、現在の親権制度では規定されていません。そればかりか、未だに明治民法の単独親権制度を堅持し、基本的に婚姻中以外は片方の親(主に母親)が子育てをすることを規定し、家庭裁判所では、別居・離婚の際、もう片方の親と子との関係を一切断絶するか、月に1回2時間という非常に貧弱な親子交流を標準とする運用がされています。現代社会において、「親子の愛着形成」という人間が生きるための基本を失わせる、「法害」と言わざるを得ない親権制度のどこに正当な理由があると言うのでしょうか。

現在、離婚後の子の養育に関して親権制度の見直しに向けた法制審議会が進行中ですが、10月31日に公開された要綱案たたき台(2)では、養育費の強制徴収が強化される内容だけが規定され、親子の直接的な関係性を保障する内容はどこにも含まれていません。子どもはカネだけ渡せば育つとでも言うのでしょうか。そして、日本国憲法第24条で「両性の本質的平等」が謳われ、男女が共に働き・子育てをすることを推奨する政策を取っている一方で、「男はカネ、女は子育て」を前提とした民法改変を行うことは、国民から全く理解を得られないでしょう。仮に、このような民法改変を行ったとしたら、婚姻数も出生数も急減することは間違いありません。このような、裁判所が現状の運用を変更したくないがための、法務省出向の裁判官による要綱案たたき台は、国民のためのものではなく、裁判所のための民法改変に他なりません。

本プロジェクトは、男女平等の子育てを実現するため2023年2月にパブリックコメントに対して意見を述べているため、詳細は割愛しますが、一度愛し合った男女の争いを極力軽減させ、仮に父母が別居・離婚したとしても、子が父母双方と親子の愛着形成ができるようにするために、次の事項を要望いたします。参考までに、外務省「ハーグ条約関連資料」ページに掲載されている、各国の「親子関係の保障」及び「子の最善の利益」の明文規定の例を添付致します。

1.裁判官の属人的な判断を規制するために、子の養育及び教育は実父母の固有の権利義務であること、及び平等な子育て(監護時間)を保障する権利義務を持つ明文規定を設けてください。

2.裁判官の属人的な判断を規制するために、「子の最善の利益」を具体化する明文規定を設けてください。特に家庭裁判所の親子断絶をすることを子の利益と判断する傾向を否定するため、直接的な親子関係が保障されることを明記してください。

3.離婚時に限定した単独親権化(親権喪失)要件を規定しないでください。既に民法第834条に親権喪失要件の規定があるのにも関わらず、離婚時のみ異なる親権喪失要件を規定することは比例原則に反します。

以上

 

(参考)各国の「親子関係の保障」及び「子の最善の利益」の明文規定の例

※外務省「ハーグ条約関連資料」ページより

■オーストラリア

第60条CA 養育命令における最優先の考慮事由としての子の最善の利益

裁判所は、子に関してある特定の養育命令を行うか否かを決定する場合、子の最善の利益を、最優先に考慮しなければならない。

第60条CB 本款の適用対象となる訴訟手続

第1項 本款は、本章に従って行われ、子の最善の利益を最優先の考慮事由とする訴訟手続すべてに適用される。

注記:第10節についても、本章に従って行われ、子の最善の利益を最優先の考慮事由とする訴訟手続において、裁判所は、弁護士が子の利益を独立して代理する命令を行うことができるものとする。

第2項 本款は、第60条G第2項、第63条F第2項、第63条F第6項、又は、第68条Rが適用される子に関する訴訟手続にも適用される。

第60条CC 裁判所における子の最善の利益の判断のあり方

子の最善の利益の判断

第1項 裁判所は、第5項に基づいて、子の最善の利益とは何かを判断する際は、第2項及び第3項所定の諸事由について考慮しなければならない。

主要な考慮事由

第2項 主要な考慮事由は、次の通りである。

(a)子が両親との有意義な関係を有することによる利益、及び、

(b)子を虐待、ネグレクト若しくは家庭内暴力を受ける、又は、それらを見聞きすることによる身体的又は心理的な危害から保護する必要性。

注記:これらの考慮事由を主要な考慮事由に据えた点は、第60条B第1項(a)・(b)規定の本章の目的に沿っている。

第2項A 第2項に定める諸事由を適用する際、裁判所は第2項(b)規定の諸事由を、より重要なものとして評価するものとする。

付加的な考慮事由

第3項 付加的な考慮事由は、次の通りである。

(a)子が表明した一切の見解、及び、裁判所において子の意見を評価する際に関連性があると考えられる一切の要素(例えば、子の成熟性・理解度等)。

(b)次の者と子との関係性

(i)子の父又は母

(ii)その他第三者(子の祖父母・その他親族等)。

(c)子の父又は母が、次の点について、どの程度機会を持ってきたか、あるいは、持ってこなかったか

(i)子に関する重要な長期的事項をめぐる決定に参加すること

(ii)子と共に時間を過ごすこと

(iii)子と通信すること。

(ca)子の父又は母が、子に対する扶養義務を、どの程度果たしてきたか、又は、果たしてこなかったか。

第d号 子の環境に生じ得る一切の変化。例えば、次の人物との離別による影響を含む。

(i)子の父若しくは母

(ii)子がそれまで共に暮らしてきた、その他一切の子、若しくは、その他一切の第三者(祖父母・その他親族等)。

(e)子が、一方の親と時間を共に過ごし、通信するために発生する現実的な困難及び費用、並びに、その困難又は費用のために、子が父母双方との間の密接な関係を維持し、父母双方と定期的に直接面会する権利に大きな影響が及ぶか否か。

(f)次の人物において、子の心理的及び知的ニーズ等の諸ニーズに応えることのできる能力

(i)子の父母各々

(ii)その他の第三者(子の祖父母・その他親族等)。

(g)子、子の父又は母における成熟性、性別、ライフスタイル、及び、その他背景(ライフスタイル、文化及び伝統を含む)、並びに、裁判所が関連性を有すると考える、その他一切の子の特性。

(h)もし、子がアボリジニ出身の子、又は、トレス海峡諸島出身の子である場合

(i)子が自身のアボリジニの文化、又は、トレス海峡諸島の文化を享受する権利(当該文化を共有する他者と共に当該文化を享受する権利を含む)

(ii)本章に基づいて行おうとする養育命令が、当該権利に及ぼし得る影響。

(i)子の父又は母が、子に対して、及び、親としての責任に対して示す態度。

(j)子又は子の家族の構成員に関わる一切の家庭内暴力。

(k)もし、子、若しくは、子の家族構成員に対して家庭内暴力に関する命令が発令される、又は発令されている場合、当該命令から導かれる一切の関連する推察。この点については、次の事由を考慮に入れるものとする。

(i)当該命令の性質

(ii)当該命令が発令された事情

(iii)当該命令の申立手続において認められた一切の証拠

(iv)当該命令において、裁判所により行われた、又は当該命令の申立手続において行われた一切の事実認定

(v)関連性を有する、その他一切の事由

(l)子に関する更なる訴訟の提起を最も回避し得る命令について、これを命じることが好ましいか否か。

(m)裁判所が関連性を有すると考える、その他一切の事実又は事情。

合意命令

第5項 もし、裁判所が、訴訟手続の当事者全員の合意の下で命令を出すことを検討している場合、裁判所は、第2項又は第3項規定の諸事由の全部、又は、いずれかを考慮することができるが、その考慮を義務付けられるものではない。

アボリジニ又はトレス海峡諸島の文化を享受する権利

第6項 第3項(h)において、アボリジニ出身の子、又は、トレス海峡諸島出身の子が、アボリジニ、又は、トレス海峡諸島の文化を享受する権利とは、次の点の権利を含む。

(a) 当該文化とのつながりを維持すること

(b) 次の点のために必要な支援、機会、及び、奨励を受けること。

(i) 子の年齢、成長発達の程度、及び、子の意見に従って最大限、当該文化を探究すること。

■ブラジル

第1583条 [子の]監護は、単独で、又は共同で行う。

補項1 [父母に]共通の子の親権に関しては、実親の一方のみ又はこれに代わる者[第1584条補項5]に帰する単独の監護、並びに同居していない父母の権利義務の共同の責任及び行使に帰する共同の監護を含む。

補項2 共同の監護においては、子と同居する期間は、子の現実の状態及び利益を考慮して、母と父とで均衡が取れた形で分配しなければならない。

補項3 共同の監護において、子の住居の基礎であるとすべき都市は、子の利益によりよく対応したものとする。

補項4 (大統領による採択拒否)

■カナダBC州【37条】

1項 後見、養育に関する取決め若しくは子との面会交流に関して、本節の下で、取決め又は命令を下す際、当事者及び当該裁判所は、子の最善の利益のみを考慮しなければならない。

2項 子の最善の利益、子の環境及び要求のすべてを決定する際には、次のことを含み考慮しなければならない。

(a) 子の健康及び精神的な安定

(b) 子の意見、ただし、それらを考慮することが不適切な場合は除く

(c) 子と子の人生において重要な人物の間にある関係性の本質及び強さ

(d) 子の世話をした経歴

(e) 子の年齢及び発育段階に与えられ、子が安定するための要求

(f) 後見人若しくは子の後見を請求する者、又は親責任、養育時間若しくは子との面会交流を求める各人の責任を行使する能力

(g) 子又はその他家族構成員に対して向けられたファミリー・バイオレンスにかかわらず、子の安全、安心又は子の福祉に及ぼすファミリー・バイオレンスの影響

(h) ファミリー・バイオレンスの責任を負うべき者の行為が、その者が子の要求を満たし、子の世話をする能力が低下する可能性があることを示すかどうか

(i) 協力を要求することが、子又は他の家族構成員の安心、安全若しくは福祉に対する危険性が増加するかどうかを含む、子に影響を及ぼす問題についての協力を、子の後見人に求める取決めの妥当性

(j) 子の安心、安全若しくは福祉に関する民事又は刑事手続き

■フランス【第373条の2】

①両親の離別は、親権の行使の帰属の規則に影響を及ぼさない。

②父母の各々は、子との身上の関係を維持し、他の親と子との関係を尊重しなければならない。

③両親の一方の居所のあらゆる変化は、それが親権の行使の態様を変更する限り、他方の親の前もってのかつ適切な時における情報の対象とならなければならない。不一致の場合は、親の一方は家族事件裁判官に申し立てることができる。家族事件裁判官は、子の利益が要求することに従って裁判する。裁判官は、移動の費用を配分し、結果に応じて子の養育及び教育の分担額を調整する。

■ドイツ【基本法6条2項】

子の保護と教育は親の自然の権利であり、かつ何よりもまず親に課せられた義務である。この義務の実行については、国家共同体がこれを監視する。

■イタリア【第337条の3 子に関する措置】

未成年の子は、父母のそれぞれと等しい関係を継続的に維持する権利および父母による監護、教育、訓育および精神的援助を受ける権利を有し、また父母それぞれの尊属および親族との重要な関係を保持する権利を有する。

■メキシコ【第417条】

親権を行使する者は、たとえ監護権を有していなくても、危険性が生じない限り子らと共に過ごす権利を持っている。合理的理由なく未成年者と親との人的関係性を妨害することはできない。

これに反する場合には、未成年者およびどちらかの親の要求に応じて、家庭裁判官が子どもの最善の利益に資するように決定する。前段落に述べた共に過ごす権利は、親権の停止または喪失の場合と同様に、その行使のために定められた方法に従って、司法命令によってのみ制限が可能となる。

■スウェーデン【第2a条】

子の最善の利益は、監護、居所および面会交流に関する全ての問題、つまり、本章の諸規定下での諸決定における至高の考慮事項である。

子の最善の利益の判断においては、子が、虐待、拉致、監禁されるまたはその他の被害を受ける危険性、および、両親と子の親密かつ良好な関係が考慮されなければならない。

■米国アリゾナ州

5-403条 法的決定権限 子の最善の利益

  1. 裁判所は最初の決定又は変更を求める決定において、子の最善の利益を諮り、 法的決定限及び養育時間を決定しなければならない。

1.過去、現在、及び潜在的な将来の親子関係

2.子と子の親(両親)あるいは子の兄弟等子の最善の利益に重要な影響を及ぼす者との相互交流関係

3.子の家庭・学校・地域社会への適応

4.子が相応の年齢に達し成熟している場合には、法的決定権限及び養育時間に関する子の希望

5.関係する当事者全員の精神的及び身体的な健康

6.どちらの親が、子に対し他方の親との、頻度の高い意義のある継続的な接触を許容する 傾向にあるか。この規定は、裁判所が、片方の親が子を家庭内暴力の目撃又は家庭内暴力若しくは子の虐待の被害者となることから防ぐために善意で行動している場合には適用されない。

7.一方の親が訴訟の費用を増額させる目的で、又は、裁判所に対して自らに有利な法的決定権限や養育時間の決定を得させるよう説得する目的で、裁判所に対し、不必要な遅延をもたらすような誤導をしたかどうか。

8.25-403.03条に基づく家庭内暴力または子どもの虐待があったかどうか。

9.法的決定権限又は養育時間に関する合意を得るにあたり一方の親により用いられた強制や脅しの程度。

10.親が本編第3章第5条を遵守しているかどうか。

11.いずれかの親が 13-2907.02条の規定する子の虐待や養育放棄につき虚偽の告発をしたことにより有罪となったかどうか。

以上