子育て改革のための共同親権プロジェクトは、手作り民法・法制審議会、共同親権運動・国家賠償請求訴訟を進める会、ずっともっとちゃんと共同親権とともに、「法制審議会家族法制部会要綱案に対する意見書〜会えない!要綱案から、「親子でいられる」民法を〜」を、2024年2月7日に法務省に対して提出致しました。

要望書本文

要望書イメージ

要綱案検証結果

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以下要望の概要

内閣総理大臣 岸田 文雄 様
法務大臣 小泉 龍司 様
国会議員 各位

法制審議会家族法制部会要綱案に対する意見書
〜会えない!要綱案から、「親子でいられる」民法を〜

2024年2月7日

私たちは主に、別居・離婚を機に親子が引き離された経験を持つ親で構成された団体です。裁判や啓発活動を通じて、現行親権制度の改革を求めてきました。

2020年10月には、子育て改革のための共同親権プロジェクトから「基本政策提言書」、2022年8月には、手作り民法・法制審議会から「改正手づくり家族法草案(大鹿民法草案)」という形で具体的な提言を発出してきました。これらの提言をもとに要綱案に対する意見を述べます。なお「手づくり民法・法制審議会」は、「共同親権運動・国家賠償請求訴訟を進める会」のメンバーを主要な構成員とする有志の政策集団です。

私たちとしては、法制審議会家族法制部会に提出されている、1月30日付けの要綱案のままでは、法案化に到底賛同できないため、次のとおり考えを述べます。

◯裁判官による裁判所のための現状維持の要綱案

要綱案には「誰が子育てをするのか」という明文規程がなく、現在の法運用を追認する現状維持の案になっています。

明治民法においては、父親による単独親権制度が規定され、母親は子育てを担う役割とされていました。そして1947年の戦後の民法改正では、憲法24条の両性の本質的平等の下、形式上の婚姻中共同親権を規定したものの、単独親権制度が維持されました。その後、法の施行当時は父親が親権を持つ割合が多かったものの、1966年に父母の割合が逆転します。以降、母親が親権を持つ割合が増加。現状の裁判離婚においては、事実上の母親単独親権制度となっており、94%もの割合で母親が親権を持ちます。

このような裁判所運用を前提とした、母親単独親権制度ともいえる内容が、要綱案には散見されます。例えば「離婚時に親権を指定し、その判断基準をあいまいな子の利益にする」「監護者の指定が残存し、指定する認容要件の明記がない」「共同監護計画の策定の義務化がない」「親子交流の時間基準が存在しない」「代諾養子縁組の残存」などです。つまり、現状と何一つ変わらず法運用できる内容が要綱案です。具体的には、裁判官の一存で父母の優劣を判断し、母を親権者とするとともに父子を断絶。また、母の再婚養子縁組によって、新しいお父さんと共に家を形成します。なお、協議離婚は裁判所の関与を増やさないために、一切手当がされませんでした。

ご存知のとおり法務省民事局長を筆頭に、法務省の職員には判検交流による裁判官が出向しています。そして、要綱案の作成には出向裁判官が関わり、部会の中で出向裁判官が要綱案を説明しています。また、部会の中では、要綱案が裁判所の運用に適合していることを、裁判所の肩書を持つ委員が意見しています。このような策定の経緯からも、要綱案は明かに裁判官によって作成され、親子の引き離しを放置してきた裁判所の法運用にお墨付きを与えることを目指す案といえます。

◯市民が求める「ふたり子育て」民法改正を

法制審議会の手続きでは、子育ての根源を変える改正案を、作れないことが明らかになりました。母親によるひとり子育てから、父母ともが子育てするという、現代社会の子育てのあり方を示せていません。その結果、市民が深刻に困っている問題を解決できないので、法曹関係者以外の支持を得ることは不可能です。現状の要綱案では、ひとり親とその交際相手・配偶者による児童虐待、民事不介入状態になっているDV事案・実子誘拐・親子断絶などを解決することができません。

本家族法の改正は、現代社会に合わない戸籍を起源とする家制度による、脆弱な家族支援、非嫡出子差別、無戸籍問題、選択的夫婦別姓といった家族問題にも本来一石を投じるはずです。父母ともが子育てして働くという、現代社会に適した「ふたり子育て」スタイルの民法改正をすることこそが、市民の支持を得ることに繋がります。このため、答申後の法案化にあたっては「ふたり子育て」で“親子が会える”民法改正を実現いただくよう、お願いしたいと存じます。

以下、要望のポイントを示します。詳細は後述します。

1 婚姻状態によらず、子の養育をする固有の権利を実父母が持ち、父母双方による養育環境を維持する責務を国が持つ理念規定を設け、理念規定を満たす条項としてください。

2 子の監護について「子の利益」を裁判所が判断する時の規制基準として、「男女平等(養育時間における父母同権)」「頻繁かつ継続的で直接的な親子関係を維持すること」を盛り込んでください。

3 各論点が改正案に反映され、可決されたならば速やかに施行してください。全面的な施行に時間がかかる場合は、新たな単独親権被害者を抑止するための経過措置を設けてください。

4 77年ぶりの家族法の大改正にあたり、要綱案の無理解や懸念から賛否双方から感情的な対立が生じています。このため立法の過程で、立案にあたった法制審の委員が説明委員となり、人々に意見を聞くタウンミーティングを各県各地で実施する機会を設けてください。その際は、民法制定の歴史的経緯、国際条約との適合、国賠訴訟で指摘される点を説明してください。

以上