子育て改革のための共同親権プロジェクトは、5月17日に「⺠法等の⼀部を改正する法律案(共同親権法案)」が参議院本会議で可決されたことを受け声明を発出しました。
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私たち自身で彩り豊かな 家族のあり方を創造しよう
私たちは、2021年までに民法の単独親権制度を廃止することを求めて、2020年から活動をして参りました。そして本日、私たちの目標から3年遅れで「民法の一部を改正する法律案」(以下、「新民法」という)が参議院本会議で漸く可決されました。この新民法は、私たちが指摘した「親が子を養育する権利」も「子の最善の利益の判断要素」も明文化されておらず、不十分な内容であることは否めません。しかしながら、少なくとも単独親権制度が廃止され、婚姻状態に寄らず父母が対等な立場で子を養育できる共同親権・共同監護の道を開いたことを、好意的に捉えたいと思います。そのうえで私たちが今考えることをお伝えします。
親子分断当事者から見た今後の課題
〜共に道を作りあげていこう〜
新民法のもとでは、共同親権・共同監護の実績を作り上げるために、新たに規定された「親の責務」や「親子の交流」を、法律家と共に個別の事案で活用していくことが重要となります。当事者だけで新たな規定を使いこなすのは難しいかもしれませんが、少なくとも今よりは、家庭裁判所に対して戦える武器が増えたといえるでしょう。また、法務省や最高裁判所において、運用ガイドラインの策定が進むと予想されますが、当事者の視点からの監視と指摘が重要になってくるはずです。新民法では、親子関係の継続を保障する規定は設けられておらず、親子断絶や実子誘拐の問題が解消されるかどうかは不透明となります。しかし、共同親権への法改正運動は、別居や離婚を機に親子が断絶したり、貧弱な交流を強いられたりした当事者たちが、自ら声を上げ続けた結果ともいえます。法改正に伴い、運動の形はおそらく変わりますが、今後も共に道を作り上げていきましょう。
司法関係者は猛省を、行政・教育機関はふたり子育て前提に改革を
〜デタラメな家庭裁判所から、人権養護機関に改革を〜
司法関係者はこれまでのデタラメな家庭裁判所の運用を猛省し、家庭裁判所が人権擁護機関となるよう、真剣に改革をしていただきたいです。同時に行政・教育機関も別居親に対する差別的な対応を改め、親の居住状態に寄らずともふたりの親が子育て・教育を行う前提に、制度と運用を改革してください。
家族という私的空間に対し、家庭裁判所は適当な理由をつけて親子を引き離して家族を解体する、という想像を絶する人権侵害を続けてきました。別居親を悪とみなし、継続性の原則・母性優先の原則などの法にないルールを作り上げ、離婚後の監護者の指定を真逆の効果に変えて婚姻中に類推適用するなど、デタラメな運用をしてきました。最高裁判所、法務省、そして日弁連は、デタラメな運用を放置してきたのです。つまり、司法ムラが業界利益を守るために、市民を犠牲にしてきたのです。条約の締結時など、法改正をすべきタイミングはありましたが、司法関係者がいくつも逃して今に至ります。やるべき仕事をしなかったために、実子誘拐や親子断絶の問題は大きくなったのです。
一方で、十年以上も共同親権運動に取り組んできた当事者もおり、特にこの数年間は法改正に向けて、多大な時間とお金を費やしてきました。さらに、親子断絶により精神を病んでいる方は、声を上げた当事者以上に多く、社会的な生産性への影響は計り知れません。つまり、司法関係者が国力の低下を生み出してきたのです。
法改正に向けた国会審議では、失墜した司法に対する信頼について、議員が質疑する場面すらありました。それにも関わらず各弁護士会が共同親権の反対声明を出すなど、未だに反省が見受けられない状態には、胸を痛めるばかりです。
企業も共同親権子育ての姿に転換を
〜固定的家族像から共同親権家族像に企業は提案を〜
先日トヨタ・オーストラリアのインターネットCMがxで話題となりました。夫婦の離婚後に、所有していた車を元夫婦同士で分かち合うという交代監護を車に例えたストーリーです。他にもスゥエーデンのIKEAのCMでは、交代監護をテーマとした暮らし方のあり方を示すような事例もあります。このように各国の企業では共同親権ライフスタイルをモチーフとした、広報が行われています。
視点を変えて日本ではどうでしょうか。本法改正により非婚・事実婚の氏が異なる父母が出現し、父と母いずれかと同じ氏となる子が存在することになります。つまり事実上の選択的夫婦別姓が実現するのです。この選択的夫婦別姓に関して、先日経団連から提言が発出されたものの、会員の中には家族特典の条件を同氏とする要件としている企業が存在します。このように未だ固定的な家族像をもとにした日本企業が中にはあります。
法制度よりも先にライフスタイルを提案する存在が、企業ではないでしょうか。なおメディアが、実子誘拐問題を報道しなかった問題は特に大きいと考えています。本法改正を機に、企業が進んで共同親権家族像を提案・紹介していただきいと思います。
一人ひとりが脱・固定的家族像を!
〜国に決められた家族像を脱し、自らでの家族・家族制度のあり方を創り上げよう〜
新民法のもと始まっていく家族像を選択する時代では、パートナーとの関係が行き詰まり、時に対立に陥ったときのセーフティネットを個人でもつ重要性が高まっていくでしょう。今までとは比べ物にならないほどパートナーとの話し合いと合意が求められるからです。また、パートナーとの対立に陥った余裕のない時に、法による冷酷なルールを、見知らぬ行政や司法の関係者から押し付けられるのは嫌なものです。だからこそ、行政や司法はあくまでも最終手段と位置づけで、主体的に身近な方々へ助けを求められる、コミュニティを形成することが重要となります。
個人が自分らしく生きやすい時代になったとはいえ、人生という大航海を乗り切るために一人だけで生きることは到底無理で、家族は人生を乗り切る根幹に位置づけられます。ただ、男女関係は1対1の人間関係である以上、結婚・離婚・再婚といった関係性の変遷は時に不可避です。だからこそ、一人ひとりが主体的に誰と男女関係を継続し、そのためにどのように制度を使いこなすかを、選択することが求められる時代となりました。例えば、新民法では未婚の共同親権が認められたことから、双方が自立しているパワーカップルにとっては魅力のない法律婚をせず、事実婚での子育ての選択肢も視野に入るようになりました。また、伝統的な性役割を大事にするカップルは法律婚を重視しても良いでしょう。つまり、新民法の可決により、個人が家族法を使いこなす時代に突入したのです。
そもそも単独親権制度は、「男は仕事、女は子育て」という性別役割分担に基づいた家継承プロジェクトを、人生を通じて達成していく根幹に位置づけられていました。特に結婚・子育てはそのプロジェクトミッションの中核に位置づけられ、本人の特性や意思とは無関係に、固定的な役割をこなさなければならなかったのです。今、不登校の問題も同時に大きくなってきていますが、家族も学校も息苦しさを生み出しているルーツは実は同源で、1890年頃に制定された各種制度に起因しています。
その制度の延長にある昭和の時代は、固定的な性役割像に基づき、家族法が家族を守ってくれていました。婚姻・離婚制度はその根幹となります。しかし、時代が変わり、個人が自分らしく生きられるようになった現代では、逆に婚姻・離婚制度で個人が守られない状態に陥っています。例えば、新民法の内容には、婚姻中に形成した夫婦間の財産を半分に分ける財産分与規定がありますが、この制度は魅力的でしょうか。夫婦共働きで、夫婦別財産制でうまくやっているケースでは、単に揉め事を増やすだけです。その一方で、固定的な性役割を超えて様々な家族像に対応する、誰にとっても魅力的な法律パッケージなどは誰にも作れません。
男女関係や親子関係といった家族関係は、時に面倒に感じたり忍耐を要したりするかもしれませんが、一人ひとりの人生を彩り豊かにするとても大事な存在が家族です。家族を求める感覚はとても自然で、「いずれ家族を持ちたい」と願う20代の未婚の方もたくさんいます。時代に合った家族、そして家族制度のあり方を共に模索していきましょう。
以上
参考)2020年10月発出の本プロジェクト基本政策提言書より