7月16日に発令をされた金子修民事局長宛の要望書を本日提出いたしました。

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法務省民事局長 金子 修 様

 

強制的単独親権制度の早期廃止を求める要望書

 

この度は、法務省民事局長へのご就任おめでとうございます。本プロジェクトは強制的単独親権制度を廃止し、早期の共同親権制度への転換に向け昨年10月に2021年までに共同親権への転換をする提言を行いましたが、現時点では実現していません。

貴職著書を拝見させていただきましたが、過去「家事事件手続法」に関する書籍を出版され、また今年に入って「ハーグ条約の理論と実務」を出版されるなど、子の連れ去りや離婚後の養育のあり方に関してご尽力を頂いてきたものと理解しております。

しかしながら、子の連れ去りや離婚後の養育のあり方に関して言えば、昨年2020年7月にEU議会にて日本国内の実子誘拐(子の連れ去り)・親子分断の問題に関する決議が採択されました。また、現在開催中の法制審議会家族法制部会の第3回議事録の中には明石市泉市長から「家庭裁判所の怠慢は本当に許し難き状況」「早急に,子どものことを考えた上での離婚制度という見直しを強く望む次第でございます。」とまで、現状の家族法及び家庭裁判所の改革について指摘を受けるような、劣悪な状況にあるのではないでしょうか。

この10年間で「民法766条」の改正、家事審判規則を廃し「家事事件手続法」を制定、「ハーグ条約(国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約)」の締約に伴い「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律」の制定といった数々の法改正が行われながら、婚姻外の子の養育に関する問題が一向に改善しない理由は、根源法である民法818条3項で規定する婚姻外の単独親権制度にあります。現状の親権制度は、婚姻中は共同親権というものの、父母の意見相違がある場合の調整機能が無いため離婚、もっというと離婚後に片親と子を完全に分断することで安定をもたらします。例を挙げると、当事者の中には2012年の離婚後、親権は父、監護者は母として、毎週末のように父と子が面会交流をしていたにも関わらず、子の成長により2019年に中学生の子が父の家から戻らなくなったことを起因として再度監護者指定の審判が申立てられ、母は子に会えない状態に陥っています。つまり現行の婚姻外の単独親権制度は、面会交流や養育費により親子の関係を作ることで安定するのでは無く、片親と子を完全に分断することで安定する制度です。このように家族を完全に分断することで安定をもたらす単独親権制度の基盤の上に、いくら各種手続き法で子の養育に父母ともが関わるよう整備しても問題は解決しません。(図1 単独親権制度のイメージ)。

父母が婚姻状態によらずとも、子の養育に権利、義務、責任を負うことで、安定するような家族制度に転換しない限り、親子のつながりを維持することができないのです(図2 共同親権制度のイメージ)。法制審議会家族法制部会にて進められている、面会交流や養育費に関する議論自体は大切なことではありますが、「群盲象を評す」のことわざで例えられるようなミクロな視点で問題を解決しようとしても現在起きている数々の家族に関わる問題を解決することはできません。視座を上げ、現実に起きている問題を俯瞰したうえで、家族を支えられるシステムに家族法をリ・デザインすることこそが今求められています。貴職におかれましては、過去各種手続法に関する出版をされており、このことを既にご理解をいただいているかと思います。

貴職著書「一問一答 家事事件手続き法(商事法務 (2012/2/1))」のはしがきには「当事者事件の手続きをより明確で、利用しやすいものとし、また、当事者等がより主体的に主張や資料の提出をすることができるようにし、もって、裁判所の調停や審判の適正さを担保し、当事者等の納得が得られやすくすることが求められるようになっていました。」といった記載があります。親子という大切なつながりを維持しながら当事者が真に納得ができるように、本プロジェクトとしては、次の要望を致します。

 

 

1.親子のつながりを維持することで安定するよう、婚姻外の共同親権制度の設計を速やかに進めてください。

以上

図1 単独親権制度のイメージ

図2 共同親権制度のイメージ

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