子育て改革のための共同親権プロジェクトは、3月8日に閣議決定がされた弱者を守れない「⺠法等の⼀部を改正する法律案(共同親権法案)」に反対します。
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私たちは主に、別居・離婚を機に親子が引き離された経験を持つ方々で構成された団体で、政策提言と賛同運動を中心に活動しています。
私たちは協力団体と共に2月7日に「法制審議会家族法制部会要綱案に対する意見書 〜会えない!要綱案から、「親子でいられる」民法を〜」を発出しました。しかし、3月8日に閣議決定がされた「民法等の一部を改正する法律案」では、その指摘内容は一切反映されませんでした。未婚・離婚で弱者に陥る親子が守られず、強者のみが使いこなせるような法案になっているため、当事者団体としては反対をせざるをえません。
以下特に、反対せざるを得ない点を指摘します。
1.子育ての原則の定めが無く、法的技術を獲得できる強者が利益を得る
本法案では、共同養育計画策定の義務付けが無いため、法的弱者は現状と何も変わりません。協議離婚制度の下、親権・監護権を奪われることが容易に起こりえます。一方で、事実婚のカップルや優秀な弁護士を雇える者は、法的技術を使いこなし、利益を得ることが出来ます。法とは本来、弱者を守るものですが、弱者の親子が守られず、強者のみが使いこなせる法案になっています。
さらに、現行の未婚・離婚後の一律単独親権から、共同親権または単独親権を選択できる変更がありますが、これは「ふたり子育て または ひとり子育て」のどちらでもよいという曖昧な定めとなります。つまり「ひとり子育て」の強制が緩まったものの「ふたり子育て」の原則が設けられていないので、実父母が子育てする保障はありません。
2.養育費の強制徴収のみの推進で、養育費の受領率向上は期待できない
本法案は「子どもに会わせないけど金だけ払え」という内容になっているので、養育費の受領率向上を期待できません。法定養育費制度・養育費の先取特権といった強制徴収にかかる内容だけが定められ、親子交流に関しては一切基準が設けられず、更に裁判所が親子交流命令を発する規程も設けられていないからです。
本法案作成に先立ち、森まさこ元法務大臣が養育費の私的勉強会を開催し、2020年5月29日に取りまとめが行われました。つまり本法案策定の重要なきっかけとなったのが養育費の未受領問題です。この養育費の未受領問題の解消に関し、頻回の親子交流時間を持つことが、養育費の履行率向上に資する統計を法務省が発表していますが、法案では親子交流時間の基準すら設けられませんでした。
3.親子が会える保障はどこにも無い
会える親子だけが会えて、家庭裁判所が関わると会えなくなる、という運用の懸念が本法案には残っています。現在問題となっている親子断絶には2つの起因がありますが、法案では手当されていません。まず、家庭裁判所の判断を規制する親子交流時間の基準がありません。次に、裁判所で親子交流の合意や審判があっても、守らない親への実効的なペナルティがありません。
1994年に日本が批准した児童の権利条約では、7条「児童は、(中略)できる限りその父母を知りかつその父母によって養育される権利を有する」9条「締約国は、児童がその父母の意思に反してその父母から分離されないことを確保する」といった条文がありますが、30年経過した今回の法改正でも条約を満たす条文は設けられませんでした。
以上